サイト全体で一つの方式に揃える必要はない
最初にお伝えしたいことがあります。CMS設計の議論をしていると、「このCMSはブロック積み上げ型です」「このCMSは定型フォーム型です」という製品比較の話になりがちです。製品全体の特性として比較する場面ではそれで構わないのですが、いざ自社のサイトを設計するとなったら、視点を変えたほうがうまくいきます。
一つのサイトの中で、ページごとに違う構成方式を選んでよい。
製品情報のページは定型フォームで、コラム本文はブロック積み上げで、お知らせは定型フォーム、特設ページはエディタ単体で。コンテンツの性質に応じて、ページごとに最適な方式を選びます。CMSによってサポートしている方式は違いますが、複数の方式を併用できる製品も多くあります。
サイト全体を一つの方式で統一しようとすると、必ずどこかに無理が出ます。すべてを定型フォームにすると、コラムや特設ページのような自由度が必要なコンテンツが書きにくくなります。逆にすべてをブロック積み上げにすると、製品情報のような構造化が必要なコンテンツで運用品質がバラつきます。
4つのページ構成方式
代表的なページ構成方式は次の4つに整理できます。
A. 定型フォーム型
特徴
あらかじめ決められた項目(タイトル・本文・画像・公開日など)に、運用者が値を埋めていく方式です。入力フォーム上に「ここにタイトル」「ここに画像」と項目が並んでおり、運用者は順番に埋めるだけでページが完成します。
向くコンテンツ
- 製品情報、サービス情報
- 人物プロフィール、会社情報
- お知らせ、プレスリリース
- セミナー・イベント情報
- よくある質問
これらの共通点は、項目の構成があらかじめ決まっていることです。「製品情報なら必ず製品名・規格・薬価・添付文書PDFがある」というように、ページごとの構成にバリエーションが出にくいコンテンツに向きます。
長所
- 入力のばらつきが起きにくく、サイト全体の品質が揃う
- 運用者が迷わない(何を入れるかが決まっている)
- 一覧表示・検索・絞り込みが実装しやすい
- 表記揺れや項目の入れ忘れを防ぎやすい
短所
- 構成にバリエーションを持たせにくい
- 想定外の構成のページを作るには、項目を追加する設計改修が必要
- 自由度を求める運用者には窮屈に感じられる
B. ブロック積み上げ型
特徴
「見出しブロック」「画像付きテキストブロック」「引用ブロック」など、複数のブロックの種類が用意されており、運用者がそれらを積み上げてページを構成する方式です。並び順や使うブロックの種類は運用者が選べます。
向くコンテンツ
- コラム本文、ブログ記事
- 特集ページ、テーマページ
- ストーリー仕立てのコンテンツ
- 構成にバリエーションを持たせたいページ
これらの共通点は、コンテンツごとに構成が変わることです。コラム1本ごとに見出しの数も画像の入る位置も違う、というようなコンテンツに向きます。
長所
- 構成の自由度が高い
- デザインバリエーションが出せる
- 表現したいストーリーに合わせてページを組める
短所
- 運用者によって出来栄えにばらつきが出やすい
- ブロックの種類が増えすぎると運用者が選べなくなる
- 一覧・検索の対象になりにくい(本文がブロック単位で分散しているため)
- デザインの統制が効きにくい
C. 定型フォーム+ブロックの混合型
特徴
ページの一部は定型フォーム、一部はブロック積み上げで構成する方式です。たとえば「タイトル・公開日・カテゴリ・サムネイルは定型フォームで埋め、本文だけはブロック積み上げで自由に構成する」といった作り方です。
向くコンテンツ
- ニュース記事、報道リリース(メタ情報は定型、本文は自由)
- 詳細ページのうち、核となる情報は揃えたいが補足部分は柔軟に書きたいケース
- 製品情報+特集要素を組み合わせたいページ
長所
- 必須情報の入力品質を保ちつつ、本文の自由度を確保できる
- 一覧表示で必要な情報(タイトル・日付・サムネイル)は確実に揃う
- 運用者の負担と自由度のバランスが取れる
短所
- 設計時に「どこを定型、どこをブロックにするか」の判断が必要
- 運用者にとっては、画面の中で2種類の入力方式が混在するため、慣れが必要
D. エディタ単体型
特徴
ページ全体を一つのリッチテキストエディタ(またはHTMLエディタ)で作る方式です。HTMLを丸ごとページに流し込むようなイメージで、構造化はほぼ行いません。
向くコンテンツ
- 移行コンテンツ(既存サイトから取り込んだHTMLをそのまま掲載)
- 一回限りの特設ページで、構造化する価値がないもの
- リプレース時の暫定措置
長所
- HTMLが書ける運用者なら、自由度が最も高い
- 既存コンテンツを取り込みやすい
- 短期的に立ち上げが速い
短所
- 運用品質が完全に運用者のスキルに依存する
- 一覧・検索・関連表示の対象にしにくい
- HTMLが書けない運用者は触れない
- 長期運用ではメンテナンスコストが上がりやすい
エディタ単体型は、他の方式が使えない場合の選択肢として捉えるのが安全です。継続的に更新されるコンテンツや、複数ページに同じパターンが出現するコンテンツには向きません。
方式を選ぶときの判断軸
4つの方式から選ぶときに使える判断軸を、3つ紹介します。
判断軸1:コンテンツの構成は決まっているか
ページごとの項目構成があらかじめ決まっているなら、定型フォーム型が第一候補です。コンテンツごとに構成が変わるなら、ブロック積み上げ型を検討します。
判断軸2:一覧・検索・関連表示の対象になるか
そのコンテンツが他の場所(一覧ページ、検索結果、関連表示など)でも使われるなら、定型フォーム型または混合型が向きます。本文がブロックで分散していると、一覧で「本文の冒頭○文字」を取り出すのが難しくなります。
判断軸3:運用者のリテラシーと運用体制
運用者が複数いて、スキルにばらつきがある場合は、定型フォーム型のほうが品質が揃います。少人数のチームで、運用者全員がリテラシーの高い人なら、ブロック積み上げ型でも品質を保てます。
混在させたときの設計上の注意
サイト全体で複数の方式を混在させる場合、設計時に押さえておきたい点が2つあります。
ページごとに方式を固定する
「このページは定型フォーム」「このページはブロック積み上げ」と、ページごとに方式を決めて固定します。同じページ型の中で運用者が方式を選べるようにすると、運用者によってページの作り方がバラつきます。方式の選択は、運用者ではなく設計時の判断にとどめます。
運用者向けの説明を用意する
複数の方式が混在するサイトでは、運用者は「このページはどの方式で作るのか」を理解する必要があります。テンプレートごとに「このページは定型フォームで作ります」「このページはブロック積み上げで作ります」と明示しておくと、運用者が迷いません。設計の初期段階で、運用マニュアルの構成も合わせて考えると後の運用が楽になります。
この回のテスト観点
ページ構成方式の選択が適切だったかは、運用が始まってからしか完全には分かりません。ただ設計段階でも、次のチェックでミスマッチを早期に発見できます。
- 想定される全コンテンツパターンを洗い出す:そのページ型で作る予定のコンテンツを、最低でも3〜5パターン具体的に想定する。すべてのパターンが選んだ方式で無理なく作れるか確認する
- 既存コンテンツがあれば取り込みテストをする:移行元サイトから既存ページを実際にCMSに登録してみて、選んだ方式で表現できるか確認する。表現できない要素があれば、方式の選択を見直すか、例外処理を設計に組み込む
- 運用者役の人に試作で入力してもらう:設計者が頭の中で「これでいける」と思っても、実際の運用者が触ると違和感が出ることが多くあります。設計段階で運用者役の人に触ってもらい、フィードバックを受ける
検証の方法論については第7回で詳しく扱います。
まとめ
ページ構成方式には4つの選択肢があり、それぞれに向き不向きがあります。サイト全体を一つの方式で統一する必要はなく、ページごとに最適な方式を選ぶのが実務的です。
定型フォーム型は構造が決まったコンテンツに、ブロック積み上げ型は構成が変わるコンテンツに、混合型はその中間に、エディタ単体型は他の方式が使えない例外的な場面に向きます。判断に迷ったら、コンテンツの構成は決まっているか、一覧表示の対象になるか、運用者のリテラシーはどうかを確認します。
次回(第2回)は、ページの種類を整理する「テンプレート一覧と命名規則」を扱います。
著者
STSD株式会社代表 鴻田孝雄。製薬企業のWebサイトを中心に、BtoB向けCMSの開発・設計に20年以上関わっている。長期運用を前提とした設計と、運用負担を最小化する仕組み作りに関心がある。











































